これまでの人生を振り返ってみると、おみそに助けてもらう機会が何度もありました。幼少期は国内だけでなくアメリカへの引っ越しを経験し、文化も言葉も違う異国の地で、学校に馴染めない時期がありました。そんな時、毎朝母が用意してくれたおみそ汁を飲むとなんだか心も身体も温まり、ホッとできたのを今でも覚えています。友達が家に遊びに来てくれた時もおみそ汁とごはんを用意し、英語が話せない中でも、食を通じてコミュニケーションをとれたことに喜びを感じたものです。

大人になってからもおみそが日常生活の相棒として、いつも傍にいてくれました。毎日手探りな状態で、慌ただしく仕事と育児の両立生活を送る中、ふと日々の食生活を振り返った時に、母が毎朝みそ汁を用意してくれていたのを思い出しました。調べていくとおみそは栄養が豊富で、手作りできることを知ることに。身近で手ごろな調味料であるおみそに段々と興味を持ち、手前みそをつくれるところを探し始めました。

みそ蔵さんで手前みその講習会があることを知り、そして30代で人生初めての手前みそづくりを体験しました。会社員で長年デスクワークをしていた私にとって、身体や五感を使って仕込むプロセスはとても刺激的な体験となりました。煮あがった大豆をひとつぶ手に取り、口に含んで感じたほのかな甘みや香り。大粒でふっくらとした存在感のある大豆を、自分の手で潰した時に感じたなめらかさと柔らかさ。米麹のかたまりを手でほぐし、そしてゆっくりと噛んで味わったお米の甘さ。幼い頃のような気持ちで夢中になり、大豆と塩切り麹を無心で混ぜていった時間。
手前みそを仕込む中で、何年も使わずに鈍っていた自分の感覚が、ゆっくりと戻っていくような不思議な体験を味わいました。その後手前みそへの関心はどんどん高まることに。そしてコロナ禍を機に、自宅で仕込めるキットを探しては家で仕込んでいくようになりました。

日本全国には、さまざまなおみそがあります。自分の家で仕込むおみそ、通称「手前みそ」は、同じ材料で仕込んでも、発酵・熟成させる場所や期間、気候などで色や味わいが異なります。まるで私たち人間のように一つとして同じもののない、ユニークな存在なのです。大豆を蒸し・茹で、じっくり麹と塩で混ぜて、しっかりと詰めていく。「手前みそ」は身体や五感を使って仕込むことができ、老若男女問わず楽しく体験することができます。また仕込んだ後の発酵・熟成期間では、「時間」を体感することもできるのです。

魅力あふれる手前みそを、人生で一度はつくってもらいたい。そんな想いから「YUMISO」はスタートしました。「YU」には優、遊、結などの想いを込めています。わたしたちは手前みそが、固有の味わいを持つ身体に優しい食であり、五感を解放して仕込む遊びの時間であり、人と人を結ぶコミュニケーションのアイコンになれると信じています。

おみそが発酵・熟成していくように、わたしたち人間も自分のペースで、周りの力も借りながら少しずつ成長していくもの。おみそも人間もユニークさを楽しみ、個性を活かして生きていきたい。できあがるまでの「待つ時間」も味わうように、わたしたち人間も人生に起きる変化を受け入れ、楽しんでみる。そしておみそが持つ可能性やユニークさを、日本だけでなく世界へも伝えていきたい。そんな想いで活動をしています。

手前みそを人生の相棒に。わたしの健康や学びとして、未来への贈り物に。そして大切な人とのコミュニケーションの機会となりますように。